第二幕:謎の連鎖
浅井 彩香に続いて、坂井 美香が倒れるという二つの不可解な事件が起きたことで、学園内は不安と混乱に包まれていた。教師たちは表向き「偶然」と説明していたが、生徒たちの間では「次はCの名前がつく生徒が襲われるのではないか」といった噂が飛び交い、緊張感が高まっていた。
そんな中、神崎 光はひとり図書室にこもり、事件の手がかりを探り続けていた。光は、アルファベット順に襲われているという事実から、犯人が何らかの意図を持ってこの順番を選んでいると確信していた。
光は図書館の一角で事件に関するメモを取りながら、自分なりの推理を進めていた。彼が着目していたのは、被害者同士に何かしらの繋がりがあるのではないかという点だ。浅井 彩香と坂井 美香——二人は特に親しい友人でもなく、普段関わりのない生徒同士だった。しかし、ふとした瞬間、光の頭の中で二人の共通点が浮かび上がった。
「そうだ、二人とも去年の学園祭で同じ実行委員会にいたはずだ…」
光はその記憶に従い、学園祭の記録が保管されている資料を調べ始めた。やはり、浅井と坂井は昨年の学園祭の運営委員として同じチームに所属していたことがわかった。しかも、そのチームにはもう一人、「C」から始まる名字の生徒がいたことも突き止める。それは、2年生の**千葉 慎太郎(ちば しんたろう)**という男子生徒だった。
光は直感的に、犯人が次に千葉を狙う可能性が高いと考えた。千葉は元々目立つタイプではなかったが、無邪気で友達思いな性格でクラスの中でも好かれていた。しかし、もし光の推理が正しいとすれば、彼もまたこの奇妙な連鎖の犠牲になるかもしれない。
「このままでは千葉が襲われる…」
光は一人で犯人に立ち向かうことを決意し、千葉を守るために動き出すことにした。彼は友人の陽太を巻き込むことも考えたが、危険な状況に無闇に巻き込むのもためらわれた。そうして、光は単独で千葉の周辺を注意深く観察することにした。
その日の放課後、光は校舎内の人気(ひとけ)が少なくなった廊下で、千葉を見かけた。光は密かに距離をとりながら千葉を見守ることにする。千葉は友人たちと談笑しながら、ゆっくりと下駄箱へ向かっていた。
しかし、その瞬間、光は廊下の端に人影が一瞬だけ見えたのに気づいた。それはあたかも、千葉の動きを見計らっているような、不自然な立ち振る舞いだった。光は警戒心を強め、千葉に気づかれないように近づきながら、その人影を追いかけた。
突然、千葉が靴箱を開けた瞬間、大きな音と共に何かが爆ぜるような音が響き渡った。千葉は驚いて後ろに飛び退り、光も思わず息を呑む。その瞬間、足元には粉々になった花火のようなものが散らばっていた。幸いにも千葉には怪我はなかったが、明らかに誰かが意図的に仕掛けた罠であった。
「なんだよ、これ…?」
千葉が戸惑いの表情を浮かべる一方で、光はその場に急いで駆け寄り、千葉の無事を確認した。しかし、その場にはまたしても「C」と書かれたメモが残されていた。それを見た千葉は青ざめ、光もまた、この連鎖がただの偶然ではなく、誰かの計画的な犯行であると確信を強めた。
千葉を守りつつ、光はその場で状況を整理し始めた。これで「A」「B」「C」とアルファベット順に襲撃されている生徒が繋がりを持つことが明らかになった。そして、その全員が去年の学園祭の実行委員会に参加していたことも、偶然ではない。
光の中で次第に、犯人の意図が見えてきた。学園祭で何かが起き、その出来事が犯人にとって深い恨みを抱かせるきっかけになったのかもしれない。犯人は、学園祭に関わった者たちをアルファベット順に襲うことで、何かを訴えようとしているのだ。
「この事件には、まだ知らない裏がある…」
光はそう呟き、次の標的が誰になるかを予測しながら、事件の核心に迫るべく、さらに調査を進める決意を固めた。
こうして光は、学園での不穏な連鎖事件に巻き込まれながらも、次の展開へと一歩踏み出すことになるのだった。
11/24/2024, 11:35:42 AM