池上さゆり

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 思い返せば、興味が湧いたのは中学生ぐらいの時だったかもしれない。始めは、クラスで心理テストが流行っていたことがきっかけだった。なぜ、その質問で相手の性格を当てることができるのかが不思議だった。詳しく調べてみると、そのほとんどはバーナム効果によるものだと知った。
 だが、その先に心理学という研究分野があることを知った。心理テストのように適当なものではなく、一つの研究として結果が保証されているものがあった。調べれば調べるほど、それは興味深かった。人間の行動ひとつで、嘘をついているかどうか。過去を思い出しているのか、未来を想像しているのか。そこにどんな感情があるのか。目線だけでわかったりするという。
 すっかりそれにハマった私は、クラスの人たちや親の行動を観察するようになった。
 だが、そんなことしなければ良かったとすぐ後悔することになる。
 楽しそうに夏休みの思い出を話していた友達も、私の成績を褒めるお母さんも、噂話に勤しむ近所の人たちも、みんな嘘をついていた。身近に嘘が溢れていることを思い知って、私はショックを受けた。
 嘘を嘘だと暴く気にもならず、ただ、嘘をつかれたという現実がひどく刺さった。
 だけど、私の探究心はそこで止まらなかった。もっと知りたいと追求すればするほど、人間の行動は面白かった。
 そうした先で、私は犯罪心理学を大学で学んだ。今や、犯罪者と会話をして、相手の本音を引き出したり、性格を感じ取ったりしている。これが天職だとは思えなかったが、中学生の頃から変わらず面白いと思うことはできた。
 だからこそだろうか。私は嘘をつく人間を好むようになった本音を見抜くのが楽しいのだ。
 今日も、自分のアリバイを証明しようと必死になる人たちを相手に本音を吐かせようとしている。

3/13/2024, 9:31:16 AM