稲の匂いがする。土の匂いがする。あいつの家の犬の匂い。汗ばんで黄色くなったファミコンの匂い。
幼い頃から一緒に歩んできた幼馴染が、地元を出た時のツンとした匂い。
上京した彼の追いかけるように僕も東京に出て五年。ようやく飲みにこぎつけた。終電を逃して飲む酒はとんでもなく美味しい。
数年ぶりにあった幼馴染はキラキラしていたのに、僕と話すとあの時の続きのように幼く見える。
よく笑う幼馴染の頬は昔より少しこけていて、髭がザラザラとしていた。
ここは大都会東京。暖色の居酒屋の明かりが彼に当たって、僕はなぜか学校の帰り道を思い出す。
カラオケの、部活の、帰り道。習い事の行き道。上京を見送る道。そして、東京の夜のまち。
君と歩いた道が、ずっと繋がって今になる。
僕らは何度、空が藍色から紫色になる時間を共に過ごしてきたのだろう。
/君と歩いた道
6/8/2025, 10:44:53 AM