トト

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中学の時観た、劇場版『銀河鉄道999』の挿入歌に「やさしくしないで」というのがあった。

これは、『999』を軸にして、実は松本零士ワールド全開の映画だったので、当時のファンは大喜びした。どこがと言うより、全編ずっと面白かったのだが、

「やさしくしないで」は、リューズという、酒場の歌手(美しい女性)がギター抱えて歌うのだが、

西部劇と、昭和の新宿ゴールデン街を足したようなディープな雰囲気の暗い酒場で、藤圭子(宇多田ヒカルの母)みたいに歌うのだ。

私はこの曲がとても気に入って、シングルレコードを買ったくらいである。言っておくが、私はレコードなんか滅多に買わない男だったのだ。

歌詞が素晴らしかった、

特に2番、

🎶何が欲しいと 言うの
私 それとも愛
疲れ果てた 心には
やさしくしないで させないで

誰でも昔ばなし ひとつやふたつ
大事そうに 語るけれど
それで どうなるの 🎶

映画では、もう酒場に朽ち果ててしまったような客やホステス達が、
リューズの歌にみんな涙している。

機械の身体で永遠の命を手に入れて居るのに、みんなが遠い昔を思い出し、泣かずには居られなくなるのだ。

リューズは、敵の機械伯爵の愛人という設定だが、そんなの関係なくいわゆる大人の「イイ女」なのである。


こんなのを見て、当時14か15歳の少年が胸打たれたのである。その歳で既に私は老成していたのか?

いや、もちろん違う。けれど、良い詩は、幼い者にもだいたい全てが伝わってしまうのである。


この頃ちょうど、漢詩を習っていて、
王翰の「涼州の詩」も読んでいた。

葡萄美酒夜光杯 (ブドウの酒を、月に輝くこの杯で飲もう)

欲飮琵琶馬上催 ( 馬上で鳴らす琵琶の音につられ、つい飲みすぎて)

醉臥沙場君莫笑 (酔うて砂の上に寝転がっていても、 君よ、どうか笑うなよ)

古來征戰幾人回 (昔から、大勢の人が戦いに赴いた、でもそこから、幾人も帰っては来れないのだ)

これもやっぱり理解出来た。

理解できるだろうと考えるから学校でも教えたのだろうが、

まあ、分からない人には分からないかも知れないが、

分かる人には分かるのである、子供だとしても。

>疲れ果てた 心には
やさしくしないで させないで

ああ、そうなんだな。




5/3/2024, 3:37:47 AM