いぐあな

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300字小説

蓼食う虫も

「野中のところに出たんだってよ」
 男子部員が声を潜める。俺達、オカルト同好会は怪異スポット巡りをしている。しかし、先月、あるスポットを訪れて以来、男子部員の部屋に次々と女の霊が現れていた。
「お前のところはどうだ?」
「うちはネズミ一匹出ない」
「そりゃ、私だって好き嫌いがあるからさ」
 女子部員が虚ろな目でケラケラと笑う。
「あんたらのところには行かないから安心しな」
 そう言って彼女はくたりと糸が切れたように倒れた。

「……つまり、面食いな幽霊だったってわけか……」
 女子部員の身体を借りた霊の話では、そういうことらしい。
「……細田くん素敵なのに解ってないな……」
「へっ?」
 振り返ると彼女の顔が真っ赤に染まった。

お題「好き嫌い」

6/12/2024, 12:08:16 PM