ムルがいなくなってから、窓の外を見ることが増えた。
貴族も王族も同じようなものだと思っていたが、割と違うんだと分かる。行動が制限される時間が圧倒的に増えた。
自分のために動く貴族と、国のために動く王族か。ムルも大概自分のことしか考えていなかったが、やはりかなり自由が奪われていたのだ。彼女も彼女なりに頑張っていたのだ。
窓の外を見るようになったのは……どうしてだろう。
手が届かないものを想像して手に入れようとするからか。
あの家にはきっと恋人とペットが住んでいる、あの家では大家族が大皿をつついている…。
思えばムルも、黙って窓の外を見ていることがあった。
そんなことを思っていたら、夜も濃くなってきた。
無数に見える家からは電気の光が漏れている。
「『ムル様』、そろそろ」
「あー、そうだね。今行くよ」
彼女はもう戻らないだろう。今では俺がムルだ。影武者として雑すぎて笑えてくるが、きっとやり遂げる。
あの明かりの中に、彼女は居るだろうか。
9/18/2024, 11:25:19 AM