バスクララ

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ぼんやりと金魚を眺めていると、不意に金魚がぴょんと金魚鉢から飛び出して空中を泳いでいた。
すごいなあ、金魚も空を飛ぶ時代かあと感心しているとコポコポと音がした。
なんだろう? と思っているといつの間にか部屋が水で満たされていて、私の出す泡が天井に向かって浮かんでいった。
金魚はすごいスピードで部屋中をギュンギュン飛び…泳ぎ回っていて、喜びを全身で表しているようだった。
だけどエアコンの前で止まって「おいでー」と声をかけると小さな金魚たちがわらわらと集まってきて、さらにコンセントからはデメキンが出てきた。
エアコンが住処なんだなあと思っていると金魚が私の周りをグルグル泳ぎ、眼前で止まった。
そしてとてつもなくゆっくりと私の耳元まで来て「どうしてここにいるの?」と超バリトンボイスで囁かれた。
ハッとなって目をパチクリさせると、私は金魚鉢の前で座り込んでいた。
小さな金魚もデメキンもいない。そもそも部屋は水で満たされてない。
ただの夢? それとも真昼の夢もとい白昼夢?
首を捻りつつ体を伸ばして部屋を出ようとすると、背後からパシャッという音と何かが床に落ちたような音がした。
振り返ると金魚が床の上でパタパタとのたうち回っている……
私は少し寒気を感じながらも金魚を金魚鉢に戻して足早に部屋を出る。
私が……いや、金魚が見たのは胡蝶の夢だったのだろうか。
答えはたぶん誰にもわからない……

7/16/2025, 12:40:11 PM