小絲さなこ

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「私たちのペース」


『よろしくお願いします』
『こちらこそよろしくお願いします』

そんなやりとりして、それっきり。
『ともだち』とアプリでは分類されているけど、違和感しかない。


だったら連絡先交換しないほうがいいのでは。
そう思うが、状況によっては交換せざるを得ないこともある。


「あー、LINEもうやめようかと思ってるんだ。なんかあんまり好きじゃなくて」

プライベートな場面でLINE交換しようと言われたときは、そう言うようにしている。

大抵「それでもいいから」と交換することになるのだけど。
そして『よろしくお願いします』でやり取りが終了。


「意味あるのかなぁ、これ……」
「そう思うなら、こっちからLINEすればいいじゃん」
「とくに用事ないもの」
「あー……うん……姉ちゃんそういう人だったわ」

妹は呆れたような顔をして、ソファに寝転んだ。

「彼氏とはLINEしてるんだよね?」
「してないけど」
「えええっ……じゃあ何で連絡取ってるの」

飛び起きる妹。
そんなに驚くこと?

「SMSメッセージだけど」
「い、いまどき?!」
「いいじゃんべつに」
「SMSだとスタンプないし、不便じゃない?」
「スタンプ選ぶ時間勿体ないじゃないの」



『よろしくお願いします』だけで止まってしまっている彼氏とのトーク画面を眺める。
これは単に、私たちの生活スタイルや会話のペースとLINEが合わなかっただけだ。


「えっと……あーうん、まぁ……二人がそれでいいなら外野がとやかく言うことじゃないか……」

妹は自分に言い聞かせるように呟き、再びソファに寝転んだ。



──── 一件のLINE

7/11/2024, 3:10:54 PM