音ノ栞

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インターホンが鳴って出てみたら、君が立っていた。
突然の君の訪問。
「……なんで来たんだよ?」
「あんたが風邪引いて仕事休んでるからでしょ!」
……あ、そうか。そういうことか。
「……ちょっと朝に頭痛があっただけだよ。たまにあるやつ。今はだいぶ良くなったから」
「また頭痛?相変わらず気圧に弱いねぇ、あんた」
余計なお世話だ。……ぐうの音も出ないけど。
「とにかくこれ!」
これ……?ビニール袋……?
「なんか買ったの?」
「あんた、どうせろくなもん買ってないんだろうから、色々買ってきた。ある程度野菜も入ってるからちゃんと食べなよね」
「……げっ」
「げっじゃない!だからたまに病欠するんでしょうが!」
それはそう。君が正しい。
「という訳で……」
「ちょっちょっ!?なんで上がろうとしてんの!?」
「え、ちょっとくらい上がらせなさいよ!どうせ料理もろくに作ってないんだろうしさ、作るわよ。ついでに数日分くらい作ってあげるから!」
「よ、余計なお世話だ!」
めっちゃ有難いけど!!!
「何言ってんのよ!病人が!!」
「へ、部屋汚ぇし!!」
「いつもじゃん!いいから!お邪魔しまーす!」
ドタドタと彼女が部屋に入り込む。
ちょっ!ちょっ!!もう!!!
「自分勝手だなぁ!!」
「あんたの割に意外と綺麗じゃん。付き合いたての方が最悪だったよ」
もう、そうやってニコニコするなよ。
めっちゃ可愛いじゃんか。
「……あんたさ、今日1回もLINE来れなかったでしょ?いつもなら病気の時でも来れるのに、今日来なかったからさ。結構辛かったんでしょ?」
うっ……図星。
彼女はいつも鋭い。
俺の生活見てるのかってレベルで鋭い。
確かに今日のは朝起きるのが辛いくらいの頭痛で、仕事への電話もとても億劫だった。
「……ふふっ、図星」
「わ、笑うなよ」
「でも意外と元気そうで良かった」
彼女はそう言って微笑んだ。
彼女は本当にいい子だ。
俺のことを本気で心配してくれる。
「……もう少し強くなるわ、俺」
「まぁ、確かに病欠はあんまり良くないけど、無理しなくていいよ。あんたはそういう人間なんだから」
彼女は優しい。
本当に優しい。
彼女は俺には勿体ないくらい素敵な彼女だ。
「……君は優しいな」
「あったり前でしょ〜!あんたの彼女だもん!」
「……なんだよ、それ」

俺は『君の彼氏』ってことが誇らしい。
それがずっと続けばいいな、なんて思ったら、
また笑われるだろうけど。

それが伝わるように、強くなろう。
今日はそれを本気で考えた夜になった。


■テーマ:突然の君の訪問。

8/28/2023, 1:57:51 PM