とある恋人たちの日常。

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 最近、ずっと考えていたことがある。それは子供が欲しいと強く思うようになったこと。
 
 時々、子供を預かることがあって、その子が本当に可愛い。その子の面倒を見るのも楽しいし、同じように面倒を見ている恋人の姿が、たまらなく愛おしい。
 
 それと、俺の仕事の危険性。
 救急隊として、それなりに危険と隣り合わせだ。実際に怪我をして彼女に心配させたこともある。
 そんなことにならないよう訓練もしている。それでも俺自身に何かあった時に彼女に残せるものがない。恋人として一緒に住んでいるけれど、他人と言われたら他人なんだ。
 
 俺は隣でスマホを見ている彼女に視線を送る。それに気がついた彼女は俺を見つめ返した。
 
「どうしましたか?」
「うーん……」
 
 ほんの少しだけ気のない返事をしてしまう。
 彼女とは〝子供が欲しいね〟と言う話もしたことがあるし、先の将来のこともぼんやりと話している。それでも、これを言っていいのか……。やっぱり不安なんだ。
 彼女の性格と関係値を思うと、ダメ……とは言わないと思うけれど。
 
 視線だけ彼女に向けたまま言葉に詰まっていると、首を傾げてしっかりと俺を見てくれる。
 
 俺は深呼吸をする。冷たい空気が体内にめぐって頭がすっきりする。そして、しっかりと彼女を見つめた。
 
「あのさ……」
「はい」
 
 声が震えるし、心臓の音がうるさい。
 それでも、伝えなきゃ。
 
「家族になろうよ」
「え……」
 
 はっきりと驚いた顔をしたと思ったら、頬を赤く染めて微笑んでくれた。
 
「嬉しい……です……」
 
 目の端に涙を溜めて、俺に抱きついてくれる彼女。それが嬉しくて、俺も抱きしめ返した。
 
「良かった……」
「え、断ると思ったんですか?」
「や。断らないとは思っているけど、百パーセントなんてないでしょ?」
「なに言っているんですか! 百パーセントですよ!!」
 
 ぷくっと頬を膨らませて、口を尖らせる彼女に心の底から安心して、より強く抱きしめた。
 
「ありがとね」
「はい、夫婦になりましょ」 
 
 
 
おわり
 
 
 
一九〇、夫婦

11/22/2024, 12:44:43 PM