狭い部屋、又はカーテン
裾のほつれたカーテンに一切の感情もなく腕を伸ばす。腰ほどの高さの窓には丈の合わない、濃紺をしたそれを勢いに任せてシャっと開ける。
未だ夢を見ているような薄らとしたした夜の暗闇から、一転、目を背けたくなるほどに眩しい朝の陽光と明瞭な現実が、狭い部屋に一人、逃げ場のない私の五感全てを襲う。
余分なカーテンの生地は、自身と現実を過剰なほどに隔てる壁を無意識に表しているのか、或いは、ただ単に安さに惹かれて選んでしまった、私の浅慮の結果なのか。(恐らく後者であろう。)
目につく度に気になるくせに、買い換える気など更々無い、2枚の大きなネイビーブルーに、窓の向こうの小さな景色たち各々が持つ鮮烈さが取って代わるとき、私の相も変わらず狭い部屋、たった一人から広がる夢の世界は、日々変わり続ける広い世界、ひしめき合う群衆や事象を伴う狭い現実と接続されるのだ。
あぁ、やはりまだカーテンは閉めておこう。
6/4/2024, 8:07:10 PM