俺、身代わりなんだけどな
誰も気づかないよ
本物はとっくに遠いところで気ままな生活を送ってるのに
今までバレずにずっとこのままだよ
たしかに、俺自身よくやれてるなとは思うけど
賢者でもない人間が賢者名乗って、嘘の神託をでっち上げてるこの状況
よく疑問の声が上がらないもんだ
まあ自惚れるようだけど、俺の他人になりきるような、そういう能力が優れているのかもしれないな
そもそも、賢者が本当に神託を得ていたか怪しい
聞いた感じ、勝手に都合よく祭り上げられただけみたいだし
神託の内容も、周りの空気を読んでいるのがバレバレだ
だから、偽物の俺でもうまくいくんだろう
こんな面倒なことになっても、賢者本人に恨みはない
状況も状況だったし、おそらく賢者は疲れ果ててしまったのだ
じゃなきゃ俺に役割押し付けて他所で自由を満喫しないよ
俺も俺で、本来なら身代わりをやめたいところなんだけど……
今は、一度身代わりとされたからには、本物がいない現在、頑張って賢者になってやろうじゃないか、という気になっている
どうせ乗りかかった船だ
もともと本物の暗殺を防いで、代わりに死ぬために用意されたのが俺だったのに、いつの間にか本物になる決意をすることになるとは、人生わからないものだな
どうせ本物の賢者は二度と戻ってこないんだし、ここからはきっと、俺流でやっても問題ないさ
賢者の話した神託は多分、賢者がご機嫌を取るためにあの連中に都合のいい内容を作り上げたものだろうな
あいつら、神託とか信じてないっぽかったし、自分の利益のために賢者を利用してたんだろ
反抗したら理由をつけて失脚させるつもりでな
だがもう、そうはいかない
俺はこれでも賢者のことは気に入ってたんだ
接してみたら優しいし、楽しい人だった
そんな賢者を追い詰めた連中に対し、俺は黙っていることはできない
かといって、派手に動けば敗北必至
ここはバレない程度に神託に毒を混ぜ、連中が気づかないようにジワジワと包囲網を構築
最終的に気づいた時には手遅れ、という段階でぶっ潰すとしよう
きっとうまくいく
改革を達成した暁には、少し休みでももらって、もう一度、本物の賢者に会いに行くかな
1/12/2026, 12:17:43 PM