ミミッキュ

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"花畑"

「おぉ……」
「これは壮観だな」
 午後はお互い空いていたので、近くの花畑に来ていた。
「まさか、近くにこんな花畑があるとは…。こんな場所、よく見つけたな」
 驚いた声で聞いてきた。
「んなの、たまたまだよ。たまたま」
 少々得意げに言う。けど、それは嘘。近くに秋の花が咲く花畑があると聞いて、見つけたのだ。秋に咲く花は綺麗なのが沢山あるから、ほんの一部でもこうやって一緒に見たかったから。
「…そうか」
 と、目を伏せながら微笑み、正面を向く。そして深呼吸をして、秋の花の香りが漂う空気を吸い込む。
「良い香りだ…」
 それに倣って俺も正面を向いて、深呼吸をする。秋の空気と共に秋の花の香りが鼻腔をくすぐって、何だかとても落ち着く。
「そういえば、貴方は秋生まれだったな」
「あぁ…、そういやそうだな」
 不意に自分の誕生日について振られて驚いて頷く。確かに暦の上では秋だ。…冬よりの秋だけど。
 寒い地域だと俺の誕生日はすでに雪が積もっていたりするから、そっちの方の人達からしたら俺は冬生まれと言われるかもしれないなぁ。なんて考える。
「この中に、貴方の誕生日まで咲いている花があるのだろうか?」
「はぁ?無理無理。今から11月の下旬まで咲いてる花は、いくらなんでも流石にねぇよ」
 あったらとんだ異形だろ、そんな花。んなゲテモノの花、絶対見たくねぇ。…見たら夢に出てきて魘されそう。
「冗談だ。そんな目で見るな」
 じゃあ言うなよ。お前が言ったら1ミリも冗談に聞こえねぇよ。
「…目で語ってくるようになったな。視線が痛い」
「はっ、そうかよ。…じゃあいつか目でバグスター倒せるようになったりしてな」
 と、わざとらしい言い方で言い返す。
「倒せはしないだろ。…だが動きを止めるくらいはできそうだな」
「真面目に考えんなよ。あと俺を遠回しにメデューサ呼ばわりすんな」
「フッ、済まない。…ひとまず、あの辺りを見て回るか」
 この野郎…。けど折角来たんだ。普段見る事の無い花だって幾つもある。季節を感じながらゆっくり見て回ろう。気を取り直して
「おぅ」
 と、返事をして、2人並んでゆっくりと歩きながら秋の花々を見て回った。

9/17/2023, 10:52:00 AM