『見えない未来へ』
弟が駄々こねてもお姉ちゃんがそれをあやし二人で笑う。
そんな微笑ましい二人を見ては君と目が合う。
目で会話するように君が何を考えてるかわかる。
家族仲睦まじい光景。
そこから目を逸らそうとすると足を掴んでくる。
弟が、お姉ちゃんが、君が...
"また置いていくの?"
三人から発せられる言葉に動けなくなる。
文字通り過去に縛られるとはこの事だろうか...
俺は家族よりも仕事を優先した結果全て失ってしまった。
そんな俺が幸せになっていいのか...
義父母の言葉もカウンセラーの言葉も心に刺さらない。
でも...今みんなの所へ行けば怒られてしまう。
そんな気もしてしまう。俺は、どうしたいんだ。
足を掴む三人をよく見ると自分に見えてきた。
声もなんだか自分の声のように...
そうか...そうだったんだ。
これはみんな俺だ。
家族を言い訳に動かない俺だったんだ。
強引に足に縛られた手を振り払う。また声が聞こえた。
"ずっと一緒だ。忘れることも離れることもない。"
そう答えて俺は軽くなった足腰を持ち上げて進み始めた。
まずは...みんなに感謝と謝罪の電話を入れないとだ。
語り部シルヴァ
11/20/2025, 11:12:09 AM