白糸馨月

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お題『沈む夕日』

 今日、俺は定時退社をした。連日連夜残業ばかりで、日々生きていくことに疲弊を感じる。
 上司は部下たちに仕事を押し付けて、自分たちは飲み会に繰り出す。こういうことを今の部署に配属されてから、何度も繰り返されてきたことに気づいた。
 俺は自分の作業を終えた。その時刻、十七時半近く。

「●●の作業が完了しました」
「はい。じゃ、次はこの作業をお願い」
「承知しました。明日、対応いたします」

 途端、上司の顔が歪んだ。まわりは、残業してるのにお前は帰るのか? そう言いたげな顔をしている。
 だが、そこで俺はひるんだりしない。「では」と、そんな上司に背を向ける。社内の丸い壁掛け時計を見た。ちょうど十七時半だ。
 俺はパソコンをシャットダウンし、「お先に失礼しますっ!」と意識的に声を上げる。皆、目を丸くする。上司にいたっては、なにか言いたげな顔をしていた。
 そんなこと知ったことない、と俺は会社を出る。

 外へ出ると空がまだ明るくて、沈みゆく夕日が発する光のせいで眩しい。俺は妙な達成感に包まれながら、帰路を急ぐことにした。

4/8/2024, 12:06:27 AM