るに

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ただいつもと同じように
道路を歩いてた。
いつも通り苦しかった。
私は小説家になりたかった。
けど物語を書いていくうちに
これまで書いてきたものも、
今書いてるものも、
全部全部
話が面白くなくて
意外性がなくて
オチがなくて
私に才能がなくて。
ずっと前に見た
魔法みたいに話が進んでいって
まるで目の前で起こってるように思えた話は
私には書けなかった。
薄々気づいてたことだったけど
改めて思うと
もう楽しくなくて。
ずっと苦しくて引っかかるだけだった。
家に帰ると
書きかけの小説と
くしゃくしゃの紙。
久しぶりにゴミ箱に入れると
ゴミ箱の下に隠された手紙があった。
見覚えのある手紙だった。
恐る恐る読んでみる。
小説家になりたい私へ。
今から初めて小説を書きます。
でも多分、
私は綺麗に話を作れない。
1文字も書いてないけど、
わかります。
私のことだから
この手紙をほんのりとしか覚えてない頃、
才能がないから諦めようだとか、
書いてても楽しくないだとか
適当な理由をつけて
簡単に夢を諦めようとすると思います。
でも私は
ごちゃごちゃで分かりずらい話でも
私の書く世界が好きです。
その事を思い出してください。
お願いだからこれ以上
私の世界をゴミ箱なんかに捨てないでください。
大切に持っていてください。
ポロポロと涙が零れた。
私は私のことを誰よりもわかっていた。
未来の私の夢を救ってくれた。
行かなくちゃ。
机に向かって
椅子に座って
白紙に世界を書かなきゃ。
私が書かなきゃ
世界は始まらないから。
"Good Midnight!"

2/2/2025, 1:00:58 PM