Ryu

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東京駅。
地下のコンコースを歩いていると、通路脇で一人の男が道行く人に何かを言っている。
大きな声で、皆に伝えるように。

「はじめまして!私、ジガミと申します!これから、この辺り一帯で頑張らせていただきますので、何卒よろしくお願いいたします!」

何だ?新手のキャッチセールスか?
だが、ほとんどの人達が見向きもせずに通り過ぎてゆく。
関わっちゃいけない相手だと認識しているからだろうか。
私も、関わらずに通り過ぎようとしたその時、あの耳障りの悪いアラーム音が一斉に鳴り響く。
…地震?
その後、軽い揺れを感じた。
大したことはなさそうだ。
それでも、地下通路での地震は心臓に悪い。
辺りの人達も、ホッと胸を撫で下ろしているところに、

「申し訳ありません!私が配属されたそばから皆様にご心配をおかけして!でも大丈夫です!先輩のオオクニさんに相談しておきます!皆様、今日もご無事で!」

男の声が、アラーム音以上に響く。
何だよ、それ。なんで地震に責任感じてんの。
先輩に相談したところでどうなるってんだよ。
そもそも、いったいどこに配属されたっていうんだ?
この辺り一帯って…ん?ジガミ?
ジガミって…もしかして、地神?
この土地の…守護神?

先輩のオオクニさんは、大国主大神ってことか?
確か、国づくりの神様だとか。

立ち止まって唖然としている私に、男が声をかけてきた。
「あ!やっと私に気付いてくれる人が現れましたね!新人のジガミです!昨今、何かと不安な災害の多いニッポンですが、天災については可能な限り鎮めるよう精進いたします!人災については貴方がたの協力があってのことですので、よろしくお願いしますね!」

…よろしくお願いされても、だ。
私一人に伝えられたところで、何も変わる訳がない。
…いや、彼も一人で頑張ってるんだよな。
彼を見習って、少しは彼に協力するか。
もしかしたら、他にも彼の声を聞き届ける人達がいるかもしれない。
そうやって、人と神の繋がりは保たれてきたのだろう。
彼の熱心な街頭演説を、無駄にしてはいけない。

4/2/2025, 12:01:27 AM