放課後のチャイムが鳴り響く。𓏸𓏸は予習に使っていたノートを、そっと閉じた。いつもの癖でちらりと窓に目をやる。
この時間帯は2階の窓から見える景色が面白い。急いで帰る者、駐輪場で話に花を咲かせている者、先生に叱られている者…。
𓏸𓏸が帰ろうと開けていた窓を閉めようとしたその時、
「𓏸𓏸!一緒に帰ろー!」
精一杯此方に手を振って叫ぶのは、幼なじみの××。腐れ縁、というやつなのだろう。小中高と相談もしていないのにずっと同じ学校で同じクラスなのだ。
𓏸𓏸はため息を1つ。階段を降りて××の所に歩いていく。
「久々なのに呼んだらすぐ来てくれるんだから〜!」
「……彼氏は?」
「今関係ないでしょー」
「……まぁええわ。はよ買えるぞ」
「はいはい、帰りまーす」
今日あった出来事をキャンキャンと話す××を、手馴れたように軽くあしらっていく。
「ねー、ちゃんと聞いてる??」
「はいはい」
「でねー、別れてさぁ」
「……あんな自慢しとったんに」
「…………んー」
「5年やろ。どっちから振ったん」
「……向こうから、女できたから別れてって言われた」
「そんなやつ別れて正解やろ」
「ん」
××は分かっていないが、実は裏で凄くモテているのだ。可愛くて面白くて、スタイルも良くて。こいつから彼氏がいなくなるのを待っている人もいるくらいなのだ。
「まぁお前ならすぐできんじゃねーの」
「彼氏はいいかなぁ……」
「ふーん」
「𓏸𓏸いるし!暇な時一緒に帰ろ」
「俺は暇じゃねぇ」
「いつも放課後暇そうに勉強してんのにぃ?」
「…………はぁ……」
「まぁいいや、ここまで着いてきてくれてありがとね!また明日!」
「おー」
ゆるーく手を振って××を見送る。窓越しに見た時より少し笑顔の増えた××を見て、いつの間にか𓏸𓏸の頬も笑っていた。
『窓越しに見えるのは』
7/1/2024, 11:45:59 AM