三神狐

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 泣きながら家を飛び出した。

 体感1度の寒空の元へ、コートのひとつも羽織らずに、マフラーのひとつも巻かずに、手袋のひとつと嵌めずに。白い息を吐きながら駆け出した。
 寒風が寝巻きの隙間から、容赦なく肌を刺す。
 かじかんで真っ赤になった指先を握り込んで、私はひたすら走った。

 見慣れたバス停に着くと、丁度バスが向かってくるところだった。
 ——よかった。間に合った。
 吸うを一回、吐くを二回繰り返しながら、バスの中に乗り込んだ。踏み入れた瞬間、暖房のあたたかさが身を包む。一番後ろの席の窓際に腰を下ろした。
 持ってきた財布の中には、一万円札が十枚。これで、どこにでも行けるだろう。

 ここじゃなければよかった。
 こんな田舎から抜け出せれば、逃げられれば、どこでも。

 そうだ。街へ行こう。
 高いビルがそびえ立つ、車がビュンビュン走っている、おしゃれな人たちが歩く、
 そして、私を知る人が誰もいない、街へ。
 

1/28/2026, 3:46:31 PM