雑穀白米雑炊療養

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一つだけ破ってはならない約束があった。燃え盛る炎の中、僕を一人逃す前に最後に母が言ったことだ。
何があっても生きる。僕はその約束を守るためだけに生きてきた。親も家も居場所もない僕が生きるためにしてきたことは人にとっては有害なものだった。それ以外どうすればいいのかわからなかったけれど、それでも約束のためにずっとそうしてきた。それくらい僕にとって母は唯一の存在で、その母との約束はただ一つの縋るものだった。
その約束を破ってしまった。守ることができなかった。今まで僕はそのために人を侵害してでも生きてきたのに。出来もしなかったならいったいそれは何のために、何の意味があったんだ。
生きろと言われて生きられなかった。ただ人を騙し傷つけ、どうしても必要だったかもしれない人から盗み奪って、その上で死んだ。
碌なことをしてこなかったが故の当たり前であるべき報いだろうか。ひどく苦しく焼けるような感覚がするのにとても寒い。
別に自分は特別不幸でもなんでもない。すべてが燃えたあの日からみんな同じだった。それでも真っ当に生きようとしていた者もいた。それなのに自分は。
どうすればよかったのだろう。真っ当な生き方をしようとしても技術もなければ知識もないし力もなかった。頭も足りなかったから真っ当じゃなくても上手く立ち回ろうとしたってできなかった。なんとかしようと精一杯努力しても結局このザマだ。
出来が悪い。碌でも無い。なんの価値があるんだろうか。
せめてもっと頭が良ければ。せめて何か才能があれば。もっと違ったかもしれないのに。
悪事ばかり働いてそのくせ死んで本当に、どの面下げて今更。
本当のことを言えばあの時母と共に死にたかった。先もなにもないのに置いていってほしくなかった。約束をせずにずっとあそこに留まっていれば良かったのかもしれない。そうすれば人に迷惑もかけなかったかもしれない。でもそれは母の望みに反してしまう。守ろうとしても反していたのにそれすら。
どうすればよかった、どうすれば、どうすれば、どうすれば。
どれだけ考えても答えが出ない。

4/3/2024, 2:25:22 PM