猫とモカチーノ

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中学生の夏休み。

部活動が楽しくて仕方がなかった私は、1日中練習に打ち込んでいた。

運動部と同じく、私が所属していた吹奏楽部も大会が夏にあったため、この時期はいちばん部全体が盛り上がっていたと思う。

とは言っても、うちの中学は所謂弱小校の部類だったので、朝から昼までのみの練習時間だった。

昼以降も音楽室は開放されていたけれど、残って練習する人はほとんど居ない。

それでも、自分の演奏に自信がなかったのと、早く先輩たちみたいに上手くなりたいと思っていたので、私は、1人残って練習するのが日課になっていた。

「今日も残ってるのか〜。すごいなぁ」

事務作業で残っていた顧問が見回りに来てはそんな風に褒めてくれたのをよく覚えている。

正直、こうやって褒めてもらえるのは嬉しいしモチベーションになった。

だからこそ、コンクールで結果が残せないのが悔しかったけど、着々と演奏の幅が広がっていくのを実感できて楽しかった記憶がある。

そんな、夏の思い出が詰まった母校の音楽室に、今は教師として立っているなんて不思議なもんだ。

まぁ、私は副顧問だから、直接指導するのは、あの時私を褒めてくれた、今は上司の顧問だけれど。

「それじゃ、練習始めようか」

コンクールの結果がどうであれ、この夏が生徒たちにとっていい思い出になるといいな。

そんなことを考えながら、生徒たちの奏でるまっすぐな音に耳を傾けていた。


お題『夏』

6/29/2024, 1:47:12 AM