緑川 悟

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「秋も終わりかあ」と感じる。電車に揺られ、窓の外を見ると田んぼの隅にススキが夕日を浴びて揺れていた。

毎年のように四季はだんだんと短くなり、忙しく過ぎ去った秋に別れを告げるように、ススキはさようならと私に手を振っていた。

思えばもう何十年もあの穂先に触れていない。どんな感触だっただろうか。

駅を出て線路沿いを我が家に向かって歩くと、網フェンスに挟まった不恰好なススキが目に入る。

おそるおそる腕を伸ばし、その穂先に触れるとそれは予想以上に硬くて、油断すると手が切れるほどだった。

そうか、お前も頑張ってるんだなと彼の頭を撫でて家路を急いだ。北風が冬の到来を告げていた。

11/10/2022, 2:01:59 PM