あにの川流れ

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 お買い物から帰ってきたら、きみはソファでうたた寝。クッションに頭を載せて、バンザイみたいな恰好で。ちょっとお口が開いているし、片足がソファから落ちてる。
 ほんとならね、毛布をかけてあげたい。
 けど、きみってば、いらないところで敏感。ぼく、47敗2勝。ね、もう偶然にかけるのもばかみたい。

 暖房を入れて。
 ゴォオオオ――って音。

 「んふ」

 キッチンでちょっと仕込み。
 トマトソース煮込みのチーズハンバーグだってつくれちゃう。あと、この前もらったお野菜はマリネにしちゃおっかな。
 あのパン屋さんすっごく並んでた。
 けど、ぼく、がんばった。だからスライスして、あとでオーブンでブン。
 ちょっとカリカリするくらいがいいよね。

 壁に設置してある給湯器のリモコン。浴槽はからっぽ。【自動】っていうボタンを。

 『お湯張りをします。お風呂の栓を閉めて下さい』
 「はぁーい」

 浴室はカビが生えないようにって、窓が全開。凍っちゃう! って思うほど。
 窓もお風呂の栓も閉めて。
 ジャアーーってお湯が湯気をたてながら浴槽に嵩を増やそうとしてる。こういうのってちょっと応援したくなっちゃう。がんばれーって。
 ……ならない? あ、そう。

 ベランダに出て洗濯物を取り込むの。畳むのはね、きみのお仕事。明日はぼくの番。
 枕カバー洗ったんだった。
 鼻先を恐る恐るうずめるの。
 ――――すぅ……よ、よし、まだへいき!
 性別問わずにするっていうから、ほんと、困っちゃう。

 ソファの前。
 きみは器用に落ちずに寝返りをうって。寝れなくなるよ、って言ったことがあったけど、夜に普通に(なんならお昼寝してないぼくよりも早く)寝てたから言うのもやめた。
 たまに変な寝言言ってる。
 突然クソデカボイス出すのはやめてほしい。

 でも寝顔はすき。
 すっごく気持ち良さそう。

 ガチャ――――浴室。
 浴槽にはたっぷりの少しだけ熱めのお湯。足からゆっくり入って、肩までどぷり。

 「あ゛~~、さいっっこう」

 ちゃぷん、ちゃぷん。
 お夕飯、よろこんでくれるかな。きみの好物ばかり仕込んだから。んふ、たべるときのきみのお顔がね、ありありと浮かぶの。
 ごはんたべてるときのきみ、すっごく満たされたお顔をしてて、つくり甲斐ある。
 弾んだ声まで聞こえてきちゃいそう。

 パシャン、パシャン。
 うねうねとぼくの肌色が波立って。

 ふと見上げれば、浴室の角にちっちゃな虹。壁も床も浴槽も白いから、反射したら虹色の光ができちゃう。
 チカッ、チカッ――――なんだか特別な気分。

 「んふ、しあわせだぁ」

 そういう気持ちになっているとね、時間がすぐに過ぎて、のぼせちゃうんだよ。



#ずっとこのまま


1/13/2023, 4:52:38 AM