YUYA

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『記憶のランタン』


夜の底で
ふと手に触れたのは、
まだ温かい——
あなたの昨日が灯した、小さな灯火。

ランタンは言う。
「忘れたくないものほど、
 人はそっと置き去りにしてしまう」と。

だから光は揺れる。
涙のように、
祈りのように、
消えそうで消えない約束みたいに。

風が吹けば、
過ぎていった声の匂いがふわりと混ざり、
あの日の影が、胸の奥で静かに再生される。

でも恐れなくていい。
記憶のランタンは
過去を縛る檻ではなく、
未来を照らすための種火だ。

あなたが歩くたび、
炎は澄んでいく。
余計なものは燃え、
残るのはただ、
ほんとうに大切だった一瞬だけ。

そして夜明け前、
ランタンの光は少しだけ青くなる。
それは、新しい物語を迎えるために
心が静かに整っていく合図。

——どうか、持っていきなさい。
あなたが選んだ記憶だけを詰めた
そのランタンを。
旅はまだ続くのだから。

11/18/2025, 11:01:32 AM