仮名K

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遅めの昼食をとると、彼女は眠いと安楽椅子に腰掛けた。彼女はうとうとしていて、今にも寝そうだ。自分の使った食器ぐらい片付けてくれ、と声をかけるが返事がない。彼女に近寄ると、寝息が聞こえる。もう夢の中のようだ。頭が下がっているので、長い真っ黒な髪の毛がすだれのように垂れ下がっている。彼女の顔を覗き込む。白くてつるつるの肌に真っ黒で長いまつげが伏せられ、小さなピンク色の唇が控えめに開いてる。ため息が出るほど綺麗で、絵になる自慢の彼女だ。
「楽園って、案外日常の中にあるんだよ」
それが口癖になっている彼女の気持ちが今なら分かる気がする。食い入るように彼女を見ていると、背後から猫の不満げな声が聞こえた。振り向くと、最近彼女が拾ってきたキジ白の仔猫が俺を見上げている。彼女の前から退くと、もう一度にゃあん、と鳴き彼女の膝に飛び乗った。彼女の膝でうろうろしていたが、位置が決まったのか座りこみ丸くなると目を閉じた。しばらくすると、仔猫のお腹がゆっくり上下し始めた。何だか俺も眠くなってきた。食器を片付けたら、ちょっとだけ寝よう。彼女の頭を優しく撫でると二人分の食器を両手に抱え、台所に向かった。

4/30/2024, 12:01:49 PM