きらり

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『失恋』

修学旅行の浮かれた空気に乗っかって好きな人に告白したら、付き合っている人がいるから……と振られてしまった。
泣き腫らした私の顔を見て、友達がそれ見たことかと軽口とも慰めとも取れるような言葉を次々に投げて寄越す。
彼に恋人がいるという噂は聞いたことはあったけど、出処も分からない噂ごときに私の恋心は鳴りを潜めることはなかった。

だけど玉砕した。
出処も分からない噂は本当だった。
「だから言ったじゃん。泣きをみるのはこっちなんだから辞めておきなって」
「縁が無かったってことで諦めるしかないねー」
友達も同室のクラスメイトも慰めてくれるけど、目が笑っている。ざまあみろと。

うるせー!
お前らに私の気持ちの何が分かるって言うんだ?
一挙手一投足なにもかも一瞬だって見逃したくないって気持ちも、目が合った時に感じる胸の高鳴りと満たされてしまう幸福感も、好きな人に選んでもらえなかった悔しさも、その恋人への嫉妬も、君と好きな人が百年幸せでありますようにと願う気持ちも、全部分かってたまるか!

私の恋心は私だけのもの。
私の失恋の痛みも、私だけのもの。誰とも分かち合うつもりはないわ。
だから、宇多田ヒカルみたく悲しい歌はしばらく歌えそうにもない……。

6/4/2023, 9:19:19 AM