そこには赤ん坊がいた
おぎゃー、おぎゃーと、泣き叫んだ。
机、椅子、ベット、シャンデリア。
全てに、いくらのような宝石が装飾されてる。
これはダサいな、と愚者が口に出しそうな小さなベッドに、その赤ん坊はいた。
小さなベッドに隠れながら、視線から逃れながら、翡翠色の頭が、ひょこっとベットを覗きこむ。
肩上までに切り揃えられた髪を揺らしながら、泣き叫ぶ彼をなんとか止めようと、小声で話しかける。
しかし、一夜漬けの定期テストかのように、その努力は実らず、タイムリミットを知らせる足音が、部屋の外から聞こえて来た。
「やばい!またね!」
神様に語りかけるかのように、こそっと喋りかけ、タイムリミットと鉢合わせないように、急いでドアを開いて、廊下を走る。
部屋に残された赤ん坊の涙は、いつのまにか止まった。
そこには少年がいた
10代前半ほどで、少し痩せこけ、元は高価でクラシックなブラウスを着ていた。
彼はじっと、その光景を見つめていた。
家が、畑が、橋が、酒場が、遠くに見える城が。
燃えていた。
轟々と、大きな音を上げ、悲鳴を呑み込みながら。
少年の後ろを、慌ただしく女性達が走り抜ける。
手には包帯やら、水やら、クリームやら。
治療に使う道具を持って、倒れ、血を出し、骨がチラ見えした者達のそばに駆け寄り、治療する。
応急の場所は満タンで、治療か助けを求めて彷徨う人達で、更に圧迫する。
声もまともに届かない中、少年は肩を叩かれ、後ろにいた気配にやっと気づいた。
「良かった、無事だったんだ。」
翡翠色の髪の毛を、腰辺りまで伸ばし、結んだ、10代後半の少女がそこに居た。
所々が燃えた、白い、フリルのワンピースを着ていた。
「燃えちゃったねー、何もかも。父上も、母上も、みんな死んじゃってたよ。」
散歩をするかのように、軽く、楽観的に、そう言った。
「なんで、悲しそうじゃないの?」
少年は、そう聞いた。
「うーん、そうだなー、だって」
少女は当たり前のように答えた。
「燃やしたの、私だもん。」
人々の悲鳴が、肉体が、遺体が、想いが。
全て、全て、炎に呑み込まれた。
翡翠色の笑みが、少年を呑み込んだ。
二人の王族は、どこかに消えた。
お題『君と一緒に』×『赤ん坊』
1/6/2026, 10:50:41 AM