目の前に、広がる
ゴツゴツとした岩肌に
僅かに、手をかける隙間を探して
大勢の人たちが
その頂を目指して登っていくんだ。
そのてっぺんには
星よりも輝き
どんな、金貨よりも価値のある
世界で1番の宝物があるのだとか。
だけど、登った人は
誰も戻らない。
いや、本当は戻ってはきているよ
身体だけになって。
空から、落ちてくるんだ。
沢山の人たちが
何ひとつ、持たずに。
僕はこの絶壁の辺り(ほとり)で
最後に声をかける番人だ。
『本当に登るのかい?』と。
ある人は、怒ったように僕を突き飛ばし
また、ある人は如何にその宝物が
必要かを僕に伝えた。
けれど、結局はみんな登っていくんだ。
太陽が沈み、誰も訪れる人が居なくなる頃に
僕は落ちて来た彼らの側を歩き回る。
そうすると、身体は瞬く間に朽ち果て
少しの間だけ、光を放ち花を咲かす。
命が燃え尽きる光だ。
僕は番人。
ただ、問うだけの存在。
行かないでとは、決して言えない存在。
【お題:落ちていく】
11/23/2024, 12:18:12 PM