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「愛する、それ故に」

 「どうして、助けに来てくれたの?」
 まるで罪人のように檻に閉じ込められ、手錠をかけられた彼女は、黒い瞳に涙を浮かべて僕に尋ねた。
 「危険だって分かってるはずなのに」
 責めるような言い方の中に、安堵感と喜びが混ざっているのが感じられる。彼女のこういう素直なところ、そして僕を心配して怒ってくれているところが本当に愛おしい。
 「君を愛しているからだよ」
 彼女の潤んだ瞳をまっすぐに見つめながら僕は答えた。こうして言葉にするととても照れくさく感じる。
 「え?」
 こっちは大真面目に質問に答えているというのに、間の抜けた声を返された。そんなに純粋な瞳で見つめられるとなんだか気まずいからやめてほしい。
 「僕は君を愛してる。だから、助けに来たんだ。危険かどうかなんて関係ない」
 服は所々破けてボロボロだし、体のいたるところから血が出ていて、とてもヒロインを助けるヒーローなどとはいえないだろう。
 それでも、僕は彼女を愛している、それ故にどんな危険な場所にも何度だって立ち向かうことができるのだ。
 

10/8/2025, 1:40:17 PM