つっち

Open App

「消えた星図」

夜のベランダ、ぼうっと空を眺める。
新月の今日は、点々とした星がいつもより輝いて見えた。
星座の形なんて、オリオン座ぐらいしか分からない。
秋口の夜空に、自分のわかる星座は目当たらなかったが、適当に分かりやすい星同士を繋げ合わせ、何座と命名しようかと想像を巡らせていた。

不意に昔のことを思い出した。
小学生時代の理科の教科書には、星図がついていた。
色んな星座の形、名前がのっていたが、形と名前が結びつかなかったことをよく覚えている。
夏の夜に、幼馴染と共に星図と空を見比べて見たが、これまた見方も分からず、星座も見つからずで、トンチンカンだった思い出がある。
つまらないな、と思っていた私に、2人だけの星座を作ろうと持ちかけてきたのはその幼馴染だった。

まずは空を見て、1番光っている星を起点に、次に光っている星を結びつける。
後は適当に2人であれこれ言いながら、オリジナルの星座というものを考えた。
これまた白熱したもので、こっちの方がそれっぽいだの、あっちの方が光っているなどワイワイと空を指さして騒いでいた。

そして決めた星座を、星図にマジックペンで書き込んだ。これまた製図の見方もわからないものだから、適当に形に合う星と星を繋げて線を引き、名前をかいた。
こうしてオリジナルの星座と星図を作り上げた時の達成感は、いまでもよく覚えている。

夜空を見上げながら、指をのばす。

「確か、あれとアレを結び合わせたら...」

と昔の記憶をこじ開けながら、あの時考えた星座をなぞる。記憶通りの場所にあったはずの星がなかったり、あの時よりも視力が落ちたのか、それとも周囲が明るなったのか。

答え合わせをしようにも、あの時の星図はどこかにいってしまった。

10/16/2025, 2:42:46 PM