「俺らそろそろ帰るね」
そう言って拓也(たくや)が準備すると玲人(れいと)も同じく立ち上がる。
「今日はありがとう、楽しかった」
「ううん、私こそ物が少なくてごめんね」
「普段と違うからそれも楽しかったよ」
玲人はさりげなくフォローを入れた。
「...じゃあ私もそろそろ...」
葉瀬(ようせ)が立ち上がろうとした時、不意に秋(あき)に袖を掴まれる。
「あ...葉瀬ちゃんには残ってほしいな...」
二人にしか聞こえない距離で秋は告げる。葉瀬も何かを感じ取ったのか何も言わずに頷く。
「葉瀬準備できたか?置いてくぞ」
「あー、ごめん。私たち今日お泊まり会するから帰んないわ」
「えーいいなー俺もしたい」
「女子限定なので~?今日は駄目~」
また今度やろうね、と葉瀬は拓也に言う。
二人をドアまで見送ると、葉瀬は部屋に戻って
「それで、どうしたの?」
と問いかけた。
「えっと...葉瀬ちゃんは拓也が好きであってるんだよね?」
「うん、それがどうした?」
「あのね____...私も好きなんだ」
「......誰が?」
「拓也のことが、私も好きなの」
空気が止まる。秋は苦しそうに葉瀬を見る。
「葉瀬ちゃんは拓也が好きでしょう?言っておかないとと思って」
「そう...」
「...ごめんなさい、葉瀬ちゃんが先に好きになったのに......」
俯いて、今にも泣き出しそうだ。
「本当に、ごめんなさ...」
「いいよ」
「そうだよね......え?」
「ん?」
「え、えっと?え?」
「...ごめんね、秋。騙してて」
葉瀬は申し訳なさそうに言う。秋は戸惑うばかり。
「その...拓也が好きって言うのは、嘘なんだ」
「...どういうこと?」
「...あ、秋に諦めないでほしくて...」
「?」
「だ、だって!!このままじゃ...!」
今度は葉瀬が泣きそうになる。
「お、落ち着いて葉瀬。私なら大丈夫だよ」
「嘘ついてごめん...」
「とりあえず、葉瀬は拓也が好きなわけじゃないんだね」
「うん...」
「...そっかぁ...良かった...」
ごめんねぇ...と抱きついて再び葉瀬は謝る。
「大丈夫だよ。ありがとう葉瀬ちゃん」
「本当ごめん...」
「もう止めてよ。私も自覚できたんだし、ね?」
そう言うと落ち着いた葉瀬は肩に頭をぐいぐいと押し付けた。
「...なら、拓也について聞いてもいいよね?」
「えっ!?」
「大丈夫~私も話すから」
「え?」
「私は、玲人が好きなんだ」
「...えー!?」
「うふふ」
二人のお泊まり会はまだ始まったばかり。
お題 「別れ際に」
出演 秋 葉瀬 拓也 玲人
9/29/2024, 9:59:54 AM