エイプリルフールだから、と言って朝からきみが嘘をついてくる。
「夢の中にキミが出てきたんだ!」
「今朝ワンちゃんとお話して「それは、絶対、嘘」…えへへ、バレた?」
「わかりやすすぎ」
買い物袋を持たされた俺と肩を並べて歩くきみ。恋人でもないのに、
「不純なんかじゃないよ、幼馴染に買い物付き合ってもらってるだけ!」
「そんなこと思ってな「顔に出てた」……ふん、」僕は、顔には、出ないほうだ。断固として。
「あーー!観覧車ある!光ってる!」
キラキラと光る観覧車にぴかぴかと目を輝かせたあと、僕の方に向いて
「一緒に乗ろうよ!ね?」と告げてきた。
夜景がきれいに見えるところまで_観覧車の四分の一のあたりまで_登ってきたところできみが呟いた。
「覚えてる?ここのジンクス」
「なんだっけ?」
それ自体の意味は、知っていた。知っているに決まっている。
「てっぺんで告白したら成功するってやつ」
「そうなんだ、でもありがちなやつじゃん」
「うっさいなー…乙女は、こういうの信じたいの!」
「へいへい」
頬を膨らませて怒るきみを見ながら思う、今日こそ告白しようかな…、と。
きみと出会ってから何十年もたった。もうそろそろ潮時じゃないか?頂上まであと、3…2…1!
「「あのさ」」
……見事に被ってしまった。なんでだ。この観覧車に乗ったらいつもこうだ。少女漫画じゃあるまいし、まあ見たことは、ないけれど
「あ、ごめんなに?」
「や、おばさんに連絡しなくていいのかなって」
「あー、うん!キミの家に泊まろっと!」
「は!?お母さんいるし…」
「嘘つき、一人暮らしのくせに」
「うるせぇ自宅ぐらしめ」
「何だと!?」
あぁ、これでいい。これが心地良いんだろう。進展なんてしなくていい。
「おかえりなさーい!」
スタッフの人の声が聞こえてきみと観覧車から降りるとき、「先降りる」ときみが僕を押しのけて前に出た。
「ちょ、すみません」
他の人に謝りながら先々と進むきみを追いかける。あと、数メートル、届い、
「好きだよ」「……は?なんて、」
「ずいぶんと韻を踏んだね。……好きだよって言ったの」
「ちょっと、待って!」
「いいじゃない、キミの家で答え合わせしたら」
そう言いながら僕の隣に立ったきみと同じ家にかえる。
よく見るときみも僕と同じように顔も耳もピンクに染まっていた。
この時間がいつまでも続いたらいいと思う。
けれど答え合わせは、今日のうちに終わらせねば。僕がどれだけ有頂天になって変なことを
言ってもエイプリルフールのせいにできるように。
4/1/2024, 11:28:24 AM