シオン

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(演奏者くんが天使だとバレた世界線)
「演奏者くんに、友達っていたの?」
 いつもの演奏会のあと、権力者は突然そんなことを聞いてきた。
 なんだと思っているんだ、人を。まるで僕が友達のいないぼっちみたいじゃないか。
「いたよ、もちろん」
「へぇ。どんな人だったの?」
 どんな?
「いちばん仲良かった奴は、天使であることを疑う、そんな性格をしていた」
「…………何それ」
 言葉の通りだ。
 あいつは天使ではなかった。というより、世間一般に知られる『天使の性格』というものに一切当てはまらなかった。もしも下界で誰かが彼のことを認知したら、きっと彼は『悪魔だ』なんて言われてしまったであろう。
「要するに、悪い奴ってことだよ」
「…………ボクと、どっちが?」
「……………………まず、僕はきみのことを『悪い奴』なんて思ったことすらないけれど」
「…………………………………………へぇ」
 凄い驚いたような顔できみはそう言った。
 権力者が悪い奴なのは、きっと立場だけであろう。やっていることは、現実世界に戻りたくないと願う迷い子たちを現実世界に帰らない、帰らせないという方法として洗脳を用いてるだけ。それはある意味『救い』とも言えるであろう。
 だから、それを求めている、または無意識にそれを望んでいる、そんな迷い子にとってきみは『悪い奴』どころか、『天使様』だと思う人だっているだろう。
 やり方が悪いだけ、とは言わない。そういう手段でなくては助けられない、そんな迷い子だっているだろうから。
 だから、僕はきみを『悪い奴』なんて思わないんだよ。

7/6/2024, 2:24:05 PM