落ち着いて聞いてください。貴方が目覚めるまでに……。
その辺にいる至って普通の高校生。超能力に目覚める訳でも、異世界に転生する訳でもなく只々普通の高校生生活を送っている。
ただ1つ、他の人と少し違う事があるとすれば。
「今日の調子はどうですか?」
事故ったーー!!!完全に事故をした。自分のミスで。調子乗って下り坂で飛ばすからこうなるんだと再度自分を戒める。全治1ヶ月。いや無駄に長いしダサい。自分で下り坂調子乗って1ヶ月なんてダサすぎる。
「元気です……」
「それは良かったです。安静にして下さいね」
笑顔が怖いよ看護婦さん。ごめんて、忙しいのにしょーもない怪我のやつがいてごめんやん。今日もめっちゃ緊急患者きてたよね、ごめんね。
……なんて、爆速謝罪を心の中でしつつ看護婦さんに会釈する。やる事もないし暇だし、のんびり寝るかとふかふかのベッドに身を預けた。
「スゥ……おはようございます!!!」
「……っ、う"ぁぁ!!」
とんでもない爆音の声で飛び上がって目が覚める。目に入ってきた景色は全く知らない世界。辺り一面砂漠で、でも気温は寒くて、空は灰色に濁っている。
これは……流行りの異世界転生ってやつなのでは?
「落ち着いて聞いてください。貴方が目覚めるまでに、5000年経過しました。ここは5000年後の元いた場所です」
「……へ?」
「こんな世界にならない為に、私と頑張りましょう」
「……いや貴方誰?」
「ここに来る前、神にお告げを貰いました。勇者となって世界を救えと」
「…………はぁ」
え、俺……俺、ただのモブキャラかよ?!この目覚め方は勇者ポジじゃないの?!?!
「共に頑張りましょう!」
手を取ってぶんぶんと握手をされる。そんな光景をポカンと見つめるしかなかった。
『目が覚めるまでに』
8/3/2024, 10:20:22 AM