ふうり

Open App

目に映るのは、空一面に広がる、反転した星座だった。
秋の大四辺形は無く、代わりに春の大三角形が見えた。
勿論、形は逆だったけど。

「どこ…ここ」

急に暗闇に包まれたかと思ったら、いつのまにか、この星空の下に立っていた。
辺りに明かりは無く、何処からか変な匂いがする。
例えるなら死臭。そんな匂い

「だ、誰か居ませんかー?」

恐る恐る、暗闇に向かって声をかける。
しかし、帰ってくるのは、無言。
流石に怖くなってきた

「と、取り敢えず歩こう。うん」

自身の恐怖を打ち消すように、声を出す。
人、せめて明かりがある所に向かおうと、何歩か歩くと、遠くから遠吠えが聞こえる。
まるで、自身の縄張りに入ってきた存在を、仲間に知らせるような、そんな音。

「!?お、狼?」

咄嗟に、その場から離れようと走り出す。
運動が出来ない体のせいか、中々スピードが出ない。
スタミナも勿論無いため、どれだけ走れるか分からない。
後ろを見ると、暗闇の中に2つの赤い光が見えた。
さっきの狼だ もう追ってきている
絶対に勝てない。 
そんな出来レースに、焦りと恐怖が、足をこわばらせる。

「も、もう無理!」

スタミナが限界になり、声を漏らしたその瞬間。
何かを斬るような音が、後ろから聞こえた。

「え?」

振り返ると、そこには大きな鎌を持った同年代ぐらいの少年が立っていた。
どうやら、鎌で狼を斬ったらしい。

「え、あ、あの」
「すまない」

急な謝罪に驚く

「俺の不注意のせいで、あんたを巻き込んでしまった。」
「責任は取る 俺の後に着いてきてくれ」

そう言って、少年は走って行ってしまう。

「あ、待って!」

やっと見えた希望の明かりを見失わないように、限界になったスタミナに拍車をかけ、着いていく。

「あ、貴方いったい」
「俺は、鎌森風真。高校2年」
「あ、同い年だ。えっと、出雲雫(いずもしずく)です。」

狂った星空の下で、ぎこちない自己紹介をしながら、2人の少年少女が駆けていく。

お題『星座』

10/5/2023, 11:13:40 AM