─行かないで─
君の背中が遠くなる。
その背中に対してかける言葉は、いくら考えても思い付かなかった。
「さよなら」や「またいつか」は違う。
「行ってらっしゃい」もきっと違う。
そんなことを考えていたら、君はもう見えなくなりそうだった。
嗚呼、何故私からは全て離れて行くのだろう。
君だって、離そうとしなくても、手をすり抜けて離れて行く。
もう、そんな思いはしたくない。
考えている内に、私は走り出していた。
君の背中に抱き付いて。
「行かないで…。」と言った。
その声は思ったよりも小さく、掠れていた。
子供のように、駄々をこねて。何回も同じ言葉を繰り返す。
分かっている。この言葉が君を苦しめることは。
でも、今は。今だけは、許してほしい。
人生を賭けても大切にしたい存在を、そう簡単に離したくないから。
それほど君が、大切で、大好きで、愛おしいから。
今回は戦争をテーマに書いてみました。
大好きな人が死ぬかもしれない、それが怖いのは人間誰しもでしょう。
愛しているから、大好きだから、その分苦しい。
貴方はそんな状況、耐えられますか?
10/24/2023, 11:56:10 AM