いぐあな

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300字小説

望んだ末路

 今年も家族総出で畑の畝をおこす。
 戦場で生きる意味を見失い、軍人崩れの殺し屋として刹那な日々を送っていた頃、ある仕事の失敗から俺は都を追われ、この辺境の村にたどり着いた。そして、剣を捨て、見よう見まねで鍬を持ち、村はずれの小さな畑から始めて、今は三世代が食うに十分な農場の主となった。
「ご飯を持ってきたよ!」
 孫の声が響く。青い空の下、皆で賑やかな昼食が始まった。

 僕が七つの歳の秋。山の不作にあちらこちらの村が魔物に襲われた。
『……やはりベッドの上で最期を迎えるわけにはいかんようだな』
 そう言って、しまってあった剣を腰に山に向かった祖父。
 魔物が僕の村を襲うことは無かったが、祖父もまた帰ってはこなかった。

お題「刹那」

4/28/2024, 11:39:19 AM