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久々に悪い夢を見た。
実家に似ているが、更に広く天井の高い家に、家族と遊んだ男全員がいた。修羅場でもなく男たちは普通に家族と話していた。が、記憶がないといったわけでもない。
夢特有のブツ切りの場面転換で、私は度々、1人になる。
あまりにも静かすぎる室内に不気味さを感じ、眉を顰め、肩をすくめながら歩いていく。長い長い廊下を歩いていく。そうして、喋り声がする障子を開けると、こちらに視線が来る。睨むまではいかないが、鋭い視線が飛んでくる。私は何も言わずに部屋を出る。勿論、止めるやつはいない。姉の名前を呼ぶ複数の声がして、私は足を早めた。
なんで、なんで、と脳内でこだまする。
私の足音と脳内のなんでが重なる。
不快で耳障りな二重奏だ。
目を見開き、息を荒くして、我を忘れるが、
途切れ途切れの呼吸になりながら、そうだ。姉の方が優秀である。姉の方が見た目も良くて、コミュ力もあって、努力家だ、そして彼氏もいる。姉と私を比べればその差は一目瞭然である。大多数が姉を選ぶだろう。
壁にもたれて考えていたら、また場面が変わる。
なんとも無慈悲だ。夢ですらも目まぐるしく展開し、息つく間もないのである。
初めて会った男と天井の高いお座敷に二人。
距離は遠い。親密な雰囲気はなく、異常な程に静かだ。
「姉みたいになったら?」
交わされた言葉はこの一語のみ。
冷たく言った想像をするかもしれないが、語尾に笑みがついていたのを私は見逃さなかった。
それは見下しの笑み、嘲笑か、それとも優しく提案してくれているのか、後者はあり得ないだろう。
何も返すことができずに、広すぎる座敷の真ん中で俯く。
孤独を助長させるかのような広さだ。
貴方の部屋は狭いアパートだったじゃないか。
孤独すら気にする余裕のない狭い一室。
貴方は「狭くてごめん」と言っていたが、
私は「狭い方が落ち着くから」と言った。
相手は嘘だと笑ったが、あれは本当である。
広すぎる部屋は孤独感と様々な負の感情を助長させる。
余白を虚無に捉えてしまうからいけないのか。
寝る直前に貴方と話していたからこんな夢を見たのだろうか。起きてすぐ、頬が冷たいことから泣いていたことを知る。自嘲に浸り目線を逸らしながら、私と姉となら姉を選ぶのは当然のことじゃないか。何を今更、
私である必要性などない。私を選ぶ人間などいない。
当然の結果だ。むしろ、良くやった。正当な方を選んだのだ。そう、おかしいと思ったんだ。私を好きなはずがない。私なんかを好きになるはずがいないからだ。
こんな夢を見ていても、未だ、好きと言えないのが笑えてくる。素っ気ない言葉ばかり吐き出すくせに、喋り声が渦巻く居酒屋で饒舌になって、他の男の話をして嫉妬をさせようなんぞ試みる、変な方向での大胆さは持っているところも、見ていられない。
姉ならば彼氏にするのと同じように、素直に甘えて、好きと言って、自分から話しかけられて、
姉には彼氏がいる、だから他の大多数に選ばれる心配はない。それが救いである。醜い救いだ。他人の幸せを、ましてや、血縁者の幸福を喜べず、そればかりか、もう選ばれることはないと安堵しているのだから。

5/12/2026, 12:16:28 AM