薄くファンデーションを塗って、淡い口紅を付け、髪を整える。鏡に写るのは完全な僕。思春期の荒れた肌を、唇を感じさせないような見目の僕だ。他の同級生よりも、小綺麗だ。シワを伸ばした制服に袖を通し、今日も学校に向かう。朝食は取らない。どうせ無駄になるから。
教室の扉を開くと、十数もの目が僕を向いた。水を打ったように、そして何も無かったように目を背ける。皆は完全な僕わ目に写そうとしない。いつものことだ。寂しさを胸に席へ行くと机には悪口、椅子に画鋲が撒かれている。多分、油性だ。当分落ちない。周りからクスクスという笑い声が聞こえる。気まずくて、いたたまれなくて、教室から逃げ出した。走って、走って、トイレに駆け込む。朝食を取らなくて正解だった。どうせ、吐き出してしまうのだから。あぁ、完全な僕が台無しだ。
不快感を負いながら、手洗い場で顔を濯ぐ。鏡を見ると、そこには化けの皮が剥がされた僕……不完全な僕が、いた。
不完全な僕
8/31/2024, 4:56:08 PM