語り部シルヴァ

Open App

『光と闇の狭間で』

冷たい風の感覚はほぼ無く、
汗が自分の輪郭をなぞるように落ちていく。
足の疲れも走っていくうちに地面を踏みしめる感覚しかない。
あと1メートルでも遠くへ走るんだ。

そう思いながら真っ暗な河川敷を走る。走る。
まだ...まだ走れる!もっと、全力で...!

そう自分に言い聞かせて走っていると
セットしていたタイマーが鳴る。
鳴ると同時に走るペースをゆっくり落として足を止める。
熱の篭った息は白くなり空へと溶けていく。

今日も走りきった。体を冷やさないうちに帰ろう。
来た道を戻ろうとすると背中が少し温かくなる。
振り返ると太陽が顔を出してきた。

ずっと暗かった部分をゆっくりと明るくしていく。
...陽の光が冷めようとしている体も温めてくれる。
半身が暖かく、半身が冷たい...

本当は早く帰って体を冷やさないようにしないと
いけないとだけど...
この瞬間が特別に感じて離れたくなかった。

語り部シルヴァ

12/2/2024, 10:35:46 AM