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ハッピーなことも、アンハッピーなことも、聞いてくれる人が、私には一人いる。
高校からの友達で、言うなれば親友だ。

高校3年間クラスが同じだったこともあって、いつも一緒にいた気がする。
どんな話をしても、ポジティブな言葉に速攻変換してくる親友のワードセンスが面白くて、元気の出ないときも二人で話していたら調子が戻ってくる、そんな感じでいつも笑い転げていた。
あまりの騒がしさに、二人して先生に呼び出しを受けたこともあった。

「そんなことあったね。何で私たち呼び出されたんだっけ?」
高校卒業後は別々の大学に進み、会う回数は減ってしまったけど、就職してからも、時々こうして会っている。
最近はこの店で食事するのが定番で、ここのレモネードが相当お気に入りの親友は、今日もレモネードを飲みながら、学生時代の記憶を辿っている。

「えー、覚えてないの?箸が転んでもおかしいとは本当のことなのか、実際にやってみようってなって、箸を転がしていたらツボに入っちゃって。二人とも笑いが止まらなくなって大騒ぎしたんだよ」
「あったあった!くだらないなあ」
「あーあ、楽しいことばかりで、あのころは良かったな」

ストローをコップの中でクルクルと回しながら、頬杖をつく親友はやれやれと言わんばかりに私の顔を覗きこむ。
「大人になって良かったことあるでしょ?」
「例えば?」
私はストローを口にくわえたまま、親友に問いかけると、反動でコップの中のコーヒーと氷が少し動いた。

「急いでいるときの移動手段にタクシーを選べるようになったとか、美味しい食べ物にお金をかけられるようになったとか」
「それね…働き始めたって大きいよね。でも、働くって大変。嫌なことも嫌な人もめっちゃ増えたし。学生のころは気楽で良かったな」
くわえたままのストローでシロップたっぷりのアイスコーヒーを吸い上げると、コップの中で氷がカランと鳴った。

「まあ、なかなか状況は変えられないけど、見る角度を変えればいいんだよ。楽しかった日々はもう戻らないって嘆くより、過ぎ去った日々がカラフルな砂みたいになって、心の中で積もっていく…って私なら思うけどね」
「さすが。何でもポジティブにしてくれるね」
「だって、楽しんだもん勝ちでしょ」
親友はそう言い切って、残り少なくなってきたレモネードを名残り惜しそうに飲んでいる。

お互いに何となく気づいている。
二人で話すことで、本当の自分を取り戻そうとしているんだってことに。

今日という他愛もない日も、過ぎ去ってしまうけど、キレイな色の砂になって、心の中に積もっていくのだろうか…

二人のコップの中で氷がカランカランと綺麗な音を響かせた。

【過ぎ去った日々】

3/10/2026, 6:46:07 AM