もも

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「魔女さん俺の今年の抱負でぇ!」

『今年も、帰って来る度に魔女さんに話を聞いて貰う!』

自信満々に猫さんが私に紙を見せてくるのだけれど、申し訳ないわ猫さん。私は文字がよめないのよ?
猫さんも知ってるはずなのに、なんで見せてくるのかしら。
よっぽど私が不思議そうな表情をしてたのね、バツの悪そうな顔で猫さんは私と紙を見て苦笑を浮かべたわ。

「あー…。魔女さん文字読めなかったか。
わりぃ。俺の国では新年になると一年の決意って意味で紙に書いとくって習慣があんだよ
えっと、紙には今年もあちこちから帰って来たら魔女さんに話を聞いて貰うって書いてある。」

それから紙をパンと一度叩いて、私になんと書いてあるか説明してくれた。
この猫さんとはもうずいぶんと付き合いが長いわね。
私は永久に家の中から出れないから、いつ頃かはもうすっかり忘れてしまったけれど、来た時のボロボロの姿は今でもしっかり覚えているの。
扉が叩かれて、ふらふらで入ってきた猫さんはあちこち血だらけで今みたいにしっかり話せない普通の猫だったのよ。
私の家は特別仕様。どんな者でも中に入ってくれば言葉だけは通じるから話を聞いてみれば

『飼い主に捨てられて戻ろうとしたら車という物に轢かれた。たまたま扉を見かけて開いていたから入った。』

息も絶え絶えでそう言っていた。
この扉もまた特別仕様で、何処にでも突然現れるのに自分か扉を開かないと中に入れないの、たまたま別のお客様が出入りする時に運良く入ったのね。
もうそろそろこの猫さんの命はない。本当はそのまま見守ってあげるのが優しさなのかもしれない。
けれど、ボロボロの猫さんを見てると昔の自分を思い出してどうしても生かしてあげたくなってしまったの。

『とってもいい場所に入って来たわね。
私は願いの魔女。
貴方のお願いを叶えてあげられるの。
猫の魂は9つあると聞くわ。貴方の魂を一つと交換で生かしてあげることが出きるけれど猫さんは生きたいかしら?』

昔の私も生きたいと願った。
私は騙されたも同然だけれど、全て分かっている今同じことが有ってもきっと……。

『生きたい。生きさせてくれ。俺はまだ世界を見たいんでぇ。
旅をしてみたいんだ。』

猫さんのは本当にあの日の私みたいだった。きっとやりたいことがいっぱい有ったのね…。だから私は迷わずにあの日願いの薬を取って猫さんに飲ませたの。


「ん!魔女さん!俺の話をしっかり聞いてるかぁ?
ぼーっとしてらしくない。」

猫さんとの出逢いの日に思考を漂わせていたら、猫さんの心配そうな顔が目の前に有った。
よっぽど深く考えてしまったのね。とっても申し訳ないことをしてしまったわ。
新年の抱負と言う決意を私に聞かせてくれて、しかもその内容が私に話を聞いて貰うなんて、猫さん文句をたまに言うけれどとても優しいのよね。

「ごめんなさい。猫さんとの付き合いも長いわって思っていたの。
決意なんて風習とてもいいわね。私も決めてみようかしら?
なら…猫さんにお休みをもう少し増やす。それが私の決意。どうかしら?」

特殊な場所にいるから、私にお友達は少ない。
こうやって素直に話せる人は本当にいないから、無茶難題はあまり言いたくないわ。
だからそんな決意を言ったら猫さんは大きく首を振った

「まぁ、結構無茶難題は言われてんだが、結構気に入ってんだ。魔女さんは、笑顔でいる!くらいでいてくれたら俺は嬉しいよ。」

珍しい。猫さんがデレてくれているなんて。
その言葉だけで笑顔になってしまう単純な私は、猫さんの書いた抱負の紙を貰うと絶対彼の話を聞こうと、彼の決意を心の中に刻み込んだ。

1/2/2024, 12:55:42 PM