蒼月の茜雲

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テーマ“街へ”

あまり、人混みは好きではない。
人に酔う、音が溢れている、眩しすぎる。
苦手な事しかない。
けれども、どうしても必要な物が
街にしかなくて…
仕方無く、街へとやって来た。
買う物ならば、今の時代
簡単にインターネットで購入出来るから
わざわざ、こんな街になんか来なくても良いけれど
私が必要としている物は
売ってはいない。

「12月1日から1月いっぱいまで、イルミネーションが…」
と、画面の向こうの人が言っていた。
知り合いでは無い。
キラキラしていてキレイだと思った。
画面越しでは見えない場所も見てみたくなって
辺鄙な場所から、わざわざ
遠く離れた街までやってきた。

周りの人は、この景色を見慣れているようで
誰一人として、イルミネーションを見ては居ない。
休日ならば、もう少し注目する人は増えるだろう。
けれど、平日の夜、仕事や学校帰りの人が
過ぎ去っていくだけ。

写真を撮ろうと、カメラを構えるけれど
そんな私を嘲笑うかのように、目の前を通り過ぎていく人たち…。

ああ、来なければ良かった。
心の底からそう思う。
イルミネーションの美しさと
人間の醜さが相まって、混沌を生み出す。

わざと邪魔をしている訳ではないのだろう。
他人を気にする余裕がないだけなのだろう。

私はカメラを仕舞い、脳裏に焼き付けるように
見つめる。
傍から見れば、怪しい人だろう。
女一人で、イルミネーションを見つめている。
(ついでに、コート、マフラー、耳あて、手袋、ムートンブーツ)
オシャレよりも防寒を優先させた、服装。

淋しげに見えぬだろうか、憐れに見えるだろうか。
それでも、私は、この輝きをただ、見に来た。
だから、きっと、私はこの街に居る人の中で一番幸せなのだと思う事にした。

1/28/2024, 2:51:43 PM