Omu

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その瞳が欲しい。

ふと欲しいものを尋ねてきた彼に、うっかり本音が漏れてしまった。
「いやごめん、ま、間違えた。忘れて。」
横並びで歩いていたが、恥ずかしくなって彼を追い越す。

…あなたの瞳が欲しい。熱のこもった視線で見つめられたい。視界を独り占めしたい。本当はずっとそう、想っている。
でも、彼がこれに気づいたら怖がられないか気が気じゃなくて、伝えられずにいた。長い間隠してきた、なのに。

彼は見逃がしてくれないようだ。
『先輩待って。僕は誕生日プレゼント聞いてるんですから、遠慮しないで言ってください』
「違うんだ、遠慮とかじゃなくて……」
彼は、俯いてもごもご言う私の手を引き留めたまま話し続ける。
『…そんな真っ赤になるほど欲しかったものって、なんですか?』

恐る恐る顔を上げる。そこには、私が手に入れたいと願って止まない熱視線があった。


『欲しいもの』

7/22/2024, 9:59:20 AM