「踊りませんか?」
夕闇の見知らぬ街の不可思議な音楽をたどり、
夜祭りのような雰囲気にぽっぽ高揚していると、
ぼんぼりの裏から、
まるで無垢という雰囲気の少年が飛び出してきた。
「僕と踊りながら西へゆきましょうよ」
少年が楽しげに指差す西の空。
どこから出したか、小さな鼓をポマンと叩く。
なんて立派な茜色。
ポマン、ポマン。
空腹も乾きも感じない。
体は🦋のように軽くて、
茜色の西の空へ飛ぶようにゆく。
いや実際飛んでいる…か。
両足裏は柔らかく風を掴んでいる。
盆踊りかタコ踊りか、へっぽこな動きをして、
少年と笑い転げ一心に踊りゆく彼岸の旅。
眼下に一面の彼岸花。さあ此岸にさようならだ。
少年と手を繋ぎ西の空を見やれば、
巨大な観音が微笑んでいた。
10/4/2024, 12:02:47 PM