しるべにねがうは

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微熱

風邪の始まりから恋の始まりまで、様々な表現ができる器用な単語。勝手にそう思っている。

ヒトの体温は平均が35度後半が平均だったり子供は36度後半だっけ?とりあえず日頃から34度後半の俺が37度ちょうどくらいの熱が出る時めっちゃ辛い。36度後半平均のやつがちょっと熱出て37度よりも通常時から3度分くらいあがる俺の方がしんどい。気がする。
いやもちろん日頃から体温高い人もしんどいよなごめん調子乗りました。みんな違ってみんな辛い。風邪?しっかり休んで。
ところでこう言う日って幻覚見るよな。
体調おかしい日って意味な。

「名状し難い形のりんご持ったお嬢の幻が……」
「本人ですわよ」
「笹本さんのうさぎりんごは…?」
「可愛かったので私が全部食べました」
「あんな可愛いのに!?」
「変色して夏の野うさぎ状態だったので……」
「それはそれで見たかったかもしれん」
「いや早く食べてくださいよ勿体無い」

枕元に置かれていた皿のリンゴは全てお嬢が平らげたらしい。
ほんとだ一個もない…みかんくうか。
この家いつでも何かしら食べて良い果物あるからすげーよな。
枕元の果物カゴから取ってもきもきむき始めたらお嬢はお嬢で林檎を食べるらしく、自前の刃物で新しくむき始めた。こいつお嬢様の癖にわりとなんでもできる。皮剥きの手の動きも滑らかだ。
掃除も料理も風呂焚きもできる。
屋敷の大きさに住んでる人間の数があってないから、やることが色々あるかもしれない。
あと『花嫁修行の一環です』つって裁縫と薙刀術と剣道と弓道と馬術もやってんだっけ。
裁縫以外なんか違くね。椿財閥はどういう相手を求めてんだ。
合戦とかすんのか。
まぁ陰陽師だから。俺まだ柔軟しかしてないけど。
いつか俺も求められるのかな。
まぁ俺ある程度1人で対処できる技術を身につけたら普通の大学行って普通の企業に就職するつもりだけど。オバケ関わりたくないから。今世話になってるだけで。

いつかは独り立ちをするのだ。

そうなるとこんな風に、誰かと過ごす時間てのがないんだろうな。
それはありがたい事だ。幸いだ。
1人は落ち着く。1人が落ち着く。

みかんがうまい。寝ながら食うの行儀悪いけど調子悪いから勘弁してくれ。

「今はどうですか、体調は」
「しにそう」
「氷枕変えますね」
「ん」
「石蕗が、だいぶここに慣れたから気が抜けたんじゃないかって言ってました、それならいいかと思って」

そうなのか。わからん。慣れない所って緊張するよな。
疲れが溜まってる感はあった。また違うのか。
わからん。俺の胸中を察する事なくお嬢はちいさくはにかんだ。

「……へぇ」
「あんまり辛かったら言ってくださいね、坐薬があるので」
「それならいいかってそういうこと!?!?」

気が抜けるくらいの間柄なら坐薬もいけるだろうってこと!?
まだまだ普通に恥ずかしいですけど!?!?
絶対坐薬の世話になりたくない。

死ぬ気で治した。
みんなも気をつけてな。季節の変わり目とかな。
ばいばい。

ごじつかひつします

11/26/2024, 11:23:11 AM