→短編・心模様
スマートフォンのsnsアプリから友人を遊びに誘ってみた。
―今、暇? 遊びに行かん?
―あかん、雲り
―じゃあ仕方ない ごゆっくり
どうやらメンタル下降中だったようだ。
友人は精神的に落ち込んでいる状態を「心が雲る」と表現する。
以前、何となく気になって「曇り」ではないのかと尋ねたら、「心が曇る」と表現するのは逆に変だと言う。心のモヤモヤは雲海のようなもので、日が雲に遮られるような感じではない、と。
「『ガスってる』と同じ用法」
「なるほど」
それ以来、彼女のその表現に違和感を覚えることはなくなり、むしろしっくりくるようになった。
私は空を見上げた。曇り空。灰色の雲が続いているが、ほんの少しの切れ目から陽の光が地上に注ぎ込んでいる。天使の梯子。
友人のメンタルが早く回復できたらいいな、と思った。
テーマ; 雲り
3/23/2025, 2:07:19 PM