ハイル

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【神様へ】

 最近は気温も上がり、随分と過ごしやすい気候になった。境内に植えられた桜も見事に咲き誇っている。ここは地味な場所だが、そちらを目当てに来る参拝者もちらほらいるようだ。
 つい先日まで少し肌寒かったような気もするが、日本の四季はどうなってしまったのだろう。確か、各々の四季を司る女神がいたはずだ。彼女たちは案外気まぐれなのかもしれない。
 私はぼうっと横になりながら、外の桜を眺めていた。ちぴぴ、と小鳥が数匹鳴いている。なんてのどかな日なのだろう。

 大晦日、初詣、それとたしか……桃の節句も終わったか。次はなんだったっか……。

 がららららん、がららららん。
 ぱんっ、ぱんっ。

 眠気眼でこの先の仕事について思いを巡らせていると、突如巨大な音に叩き起こされる。
 こんな何もない時期に一体誰なんだ。
 私の心地よい時間を奪った者を一目見てやろうと、体を起こして賽銭箱の前にいる人間に目を移した。
 そこには、体の前で合掌し、力強く願っている制服姿の少年がいた。

 ふむ、何かを願う姿勢は悪くない。どれ、内容も聞いてやらないこともない。

(神様へ、どうか、どうか、次の席替えこそ同じクラスのあの人と隣の席になりますように!)

 初いやつめ。気に入った。

 神はやはり気まぐれなのだ。

4/15/2024, 6:09:34 AM