紙ふうせん

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『梅雨』

今朝梅雨入りしたと、テレビをつけると言っていた。
嬉しくなり、いつもより少し早くうちを出る。

傘をさして歩くのが好き。
雨粒が傘にリズミカルに踊るように弾ける音がする。
外を行く人々が思い思いの傘をさしている。
雨に洗われ見慣れた風景がいつもより生き生きとして見える。

小学生が友達に出会い何人かで傘をさしているのを見ると、まるで大きなガクアザサイの様。

「おはよう」友達に声をかけられる。「梅雨入りだね」弾んだ声で言うと「とうとう梅雨入りだね、雨って鬱陶しいよね」とさも嫌そうに言われて不思議に思う。

みんなは、なぜ雨が嫌いなのかしら。
町は登校時にはシャッターが閉まっていて色が無い。でも雨が降るとみんなで傘をさすから急に町並みが鮮やかになるというのに。

一人だとハミングしながら傘をクルクルと回しながら歩く。
雨音もクルクル回る。
傘をさしていると守られている気がするその感じが好き。
雨の音を聴いていると不意にピアノ曲が聴きたくなる。

今朝、梅雨入りしたと言っていたのだからしばらくは楽しめる。

嫌な学校に行くのも、梅雨の間だけは私のお気に入りの時間になる。

6/1/2023, 11:05:41 PM