わに

Open App

隣から、あっやば、と何の感慨もない声が聞こえた。
別に興味は無かったが、とりあえず視線だけそちらに向けると、やっぱり何の感慨もない声で「あーあーあー」と言いながら下を覗き込む友の姿がある。
「なんやねん、騒がしい」
「いやさぁ、見てよこれ」
見てくれだけは女の姿をしたソイツは、二人用のソファにふてぶてしく座り直し、先程まで馬鹿みたいに覗き込んでいた下を指さす。
なんやねん……と再度もらしつつ素直に指のさす方を覗き込み、気付いてウワ、と声を上げた。
黒に浮かぶ発光体、の塊。
それは後に“星”と名付けられるものだ。握りこんだようにギュッと固まって、“宇宙”をふわふわ漂っている。
「あんっだけ分散させて撒け言われたやん……」
今日も怒られるやんけ、創造主サマに。舌打ちが盛れる。
あ〜サイッアク。完全に巻き添えやん。どないすんねんこれ。ちゅーかバレる前にさっさと拾い行けや。
「拾いに行くのは面倒臭いってぇ」
「ハァ〜?じゃあどないすんの」
責めるように詰め寄ると、ソイツは丸っとした額に手を当て、唇を尖らせてなにやら思案を始める。どうせ一分も持たんくせに。その空っぽの頭で、何を考えることがあるのか。
「こういうのはどうよ」
「言うてみ」
「木を隠すなら森の中〜〜〜ってね」
言いながら無数の“星”の入った瓶を引っくり返したソイツに、あやうくこちらもひっくり返るところだった。
“宇宙”を覗き込む。どこもかしこもキンキラキンだ。その中で一際輝く、おにぎり星。
おいおい、なんちゅー森やこれは。重要な木ぃは全然隠れてへんし。
顔を上げて隣の馬鹿を見やる。変な顔〜と笑われて、思わず手が出そうになった。いや、ちょっと出た。

「ドアホ……」



#星が溢れる

3/15/2024, 1:25:40 PM